米中の貿易戦争、関税合戦がエスカレートしています。今後この対立が軍事まで拡大するようなら、日本への影響も大きくなるでしょう。
ここでは米中対立について、現状把握や今後の予測に役立つような書籍を紹介していきます。
米中戦争の行方は?
今回の対立は、単にアメリカの貿易赤字を減らす...ということだけでなく、5Gや軍事覇権争いにもつながる側面があるため短期で終息するとはなかなか思えません。
対立について、識者の方の意見はだいたい以下の3つかなと思います。
短期終息
トランプさんとしては再選が現時点での至上命題。
現在の対立はプロレス(双方シナリオに基づいての喧嘩)であって、選挙前にはいったん対立は収まり、トランプさんが再選....というシナリオです。
アメリカ側の勝利
関税合戦では輸出量の多い中国は不利です。
香港の問題も、一歩対応を誤れば国際的な非難は免れません。
中長期的には、
・一人っ子政策などでいびつな中国な人口動態
・「中所得国の罠(わな)」による成長の停滞
・リーマンショック以降のさらなるバラマキによる負債
...など、今後の中国経済の低迷を予測する方も多いです。
旧ソ連のように経済から国が傾いていけば、アメリカ側がいずれ勝利ということになる...とするシナリオです。
中国側の勝利
最近は中国の技術力は格段に向上。すでに太平洋での米軍の優位はないとするレポートが話題となっています。
参考:
太平洋で米軍の優位性喪失、中国からの同盟国防衛は困難に 豪シンクタンク 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
中国は、長期戦も持さないしたたかさがあります。
また、アジア全体が消費地として成長していくトレンドを取り込んでいければ、経済的な長期停滞というシナリオを乗り越えていけるのかもしれません。
...いずれにせよ、うちのような庶民はどのシナリオになってもサバイバルできるよう日頃からなんとか準備していくことが大事でしょう。
米中戦争...になる前に読んでおきたい書籍は?
米中戦争 そのとき日本は (講談社現代新書) Kindle版
アメリカ海軍・空軍が主導して作成された「エアシーバトル」やランド研究所の「米中軍事スコアカード」という報告書などをベースにし、より専門的に軍事衝突の可能性や展開予測などについて紹介しています。
シミュレーションでは2017年時点では南沙諸島での軍事衝突であれば米軍が優位、台湾をめぐる戦いではアメリカの優位はないとしています。
専門用語(ミサイルの種類など)は多いですが、文章自体は平易に書かれているので比較的読みやすいです。
おすすめ度:★★★★★
米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ
米中戦争前夜という表題だが、原著は「Destined for War: Can America and China Escape Thucydides’s Trap?(戦争の運命 アメリカと中国はトゥキュディデスの罠から逃れられるか)」です。
トゥキュディデスの罠とは、「新興国と覇権国とのバランスが崩れたために大規模戦争へと発展する」という過去に何度も繰り返された事象をさします。
古くはスパルタとアテネ、近年ではドイツとイギリス・アメリカが代表例でしょう。
それらの事例を読んでいると、まさに今現在起きていることと非常に状況は似ているので怖くもあります。
過去、大規模戦争までいかなかったケースも紹介しており、その経験則は何とも生かしてもらいたいものです。
著名ファンドマネージャーのレイ・ダリオ氏などが推薦しています。
おすすめ度:★★★★
米中もし戦わば 戦争の地政学 (文春文庫)
著者ピーター・ナヴァロ氏は経済学者で、国家通商会議のトップに就任したこともある人物です。
比較的政権に近い人物が中国についてどう考えているか...という観点で読んでみるのもいいかもしれません。
本作は中国を取り巻く軍事環境について包括的に紹介してくれます。
ただ洋書にあるような読みにくさは少ないです。
章頭には小クイズがあって、そのあたりも読みやすくしてくれる工夫の一つです。
軍事比較や核は使われるかといった問題や、インド・ベトナムなどの取り囲んでいる国との関係などについても平易に紹介されており、現在の中国の環境について把握するテキストとしては一番ではないでしょうか。
おすすめ度:★★★★
文庫 北京が太平洋の覇権を握れない理由
おすすめ度:★★★
「中国の戦争」に日本は絶対巻き込まれる
タイトルと違って、内容は今までの中国の軍事的な発展の歴史についての紹介がメインです。
過去に緊張したケースで中国はどのような行動をしてきたかを把握すると、今後の予測につなげやすいかもしれません。
おすすめ度:★★