コロナ恐慌では、需要の多い外食店や観光に真っ先に影響が出ました。当然これらのお店では広告費用は真っ先に削減対象となります。 今後不況が製造業などに拡大すればするほど広告業界は厳しい時期になります。
広告業界への影響は?
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不況の時期では早いうちに経費削減の対象となるのが広告業界といわれています。 数字で見ていきましょう。
ある予測ではアメリカのネット広告が2020年1~6月期に市場規模が前年同期比2%縮小する見通しとしています。 ただ2%程度で済むとは個人的には思えません。
新型コロナ:「常勝」米ネット広告にコロナ逆風、上期2%縮小 :日本経済新聞
イタリアでの広告支出は今年、10%から15%減と予想する方もいます。
コロナウイルスと広告業界:イタリアから学ぶ、今後の展望 | DIGIDAY[日本版]
IMFでは2020年の日本は5.2%のマイナス成長と予測しており、これはリーマンショックのころと同等の数字となっています。
となれば広告業全体へも相当な影響が出ることは避けられないように思います。
チラシでは、時短営業などで広告を控えるところが多く、本来は活況であるはずのスーパーが3密対策として特売を控えるといった予想外の出来事も起きています。
ただしすべてがネガティブということではありません。
外出自粛のためテレビの視聴時間は増加。ネットの利用もずいぶんと増えています。 飲食店はテイクアウトやネット通販への取り組みを拡大しており、こうしたところから新しくネット広告を打ちたい人も増加することでしょう。 変化にいかに対応するかが求められています。
3月
グーグルが衝撃的な決算を発表しました。
3月は前年比で「10%台半ば」の減少幅となりました。
ユーザサイドでは、消費関連の検索が減る一方コロナ関連の検索が増加しました。
クライアントサイドでは出稿が減少。レストランなどお店は当然手控えるわけで、外出自粛の影響がもろに出たものと思われます。
Google 3月の広告収入が大幅減 - ライブドアニュース
一方フェイスブックは好調をキープしています。
3月は減少したものの4月は前年並みとしています。また、巣ごもり時間の増加に伴い、利用頻度が増えたとしています。
このようにグーグル、フェイスブックと異なる傾向が出ており、一言でネット広告といっても業績はまだら模様といった感じはします。
4月
ある調査では「昨年4月と比較して、約63%の企業が広告宣伝費は減少したと」としています。
特徴的なのは「100億円以下の企業では広告費を全てストップしている割合が高い」「オフラインの活動(セミナー・イベント等)が全停止」といったことです。
今のところ先行きはまだ見通せません。
参考:コロナショックで企業の広告宣伝費は前年同月比で6割以上減少(@DIME) - Yahoo!ニュース
7月
決算から春の状況が確認できるようになってきました。
サイバーエージェントは、広告事業は出稿手控えの懸念はあったのですが、巣ごもり消費を取り込むことで大きな影響は免れています。売り上げは横ばい(営業利益は6%減)
サイバーエージェント、コロナ禍の3Qは「思ったより堅調」 「ABEMA」は宣言解除後もユーザー増 - ITmedia NEWS
対策は?
新規クライアントの開拓
おそらく広告業では、お得意さん業種が決まっている場合が多いと思います。
町の商店街の場合もあれば、パチンコや飲食店など特定業種へ強いことを売りにしている場合があります。
いずれにせよ、不況では真っ先に広告費は削られざるを得ません。
大手PR会社でクルーズ船の会社などを顧客に持つWeber Shandwickではレイオフ(解雇)などをすでに実施しています。
クライアントが広告費を削減しているのであれば、頑張って営業しても無駄になる可能性は高いです。 やはり好調な業種を攻めて新規開拓する必要があるでしょう。
現在絶好調なのはスーパーで売り上げで2割程度増加しています。DIYショップやニトリなども店舗への来客は増えています。
巣ごもり需要では漫画アプリ・動画配信・ゲームなどが好調です。
新規媒体の開拓
ウーバーイーツや出前館を使った宅配も好調。テイクアウト用に効果のある媒体の開発...なども検討すべきでしょう。
コロナの影響はまだまだ無視できませんが、「マスクのプレゼント」「消毒ジェルのプレゼント」などはお客さんの受けがいいようです。
こういったところから新しい広告媒体も考えられるような気はします。
IT企業への影響は?
ITといってもすそ野は広いですが、コロナはいろんなスキームのデジタル化を促す結果となり、追い風となった企業が目立ちます。
クラウド
2020年7月の決算では、マイクロソフトのクラウド事業は堅調に成長しています。
またIBMもクラウド事業の成長が評価されて決算発表後の株価は上昇しました。
リモートワーク
リモートワークによってビデオ会議、リモート管理などのシステムの需要が急増しました。
代表的なのはZOOMで、日本でも利用者が一気に急増。他、マイクロソフトのTeamsやスカイプなどの利用も増えました。
ビジネスコミュニケーションとしては、海外ではスラック、日本ではチャットワークなどの利用も増えています。
リモート管理では、ID管理のオクタやハンコがわりの書類管理としてドキュサインといった企業が躍進しています。
Eコマース
外出自粛宣言下ではお店での販売は難しいですから、ネット通販やデリバリーへ舵を取る店舗が増加しました。
海外ではショピファイやWix、Etsyなどのコマースサイトは業績好調で株価も大きく上昇しました。
日本ではThe BASEを展開するBASEも出店数が大幅増となっています。
ジムも施設での運営は厳しいですから、ヨガレッスンの動画配信などに取り組んでいます。無料ヨガのライブ配信サイトなどに人気が集まっています。
セキュリティ
セキュリティの会社のなかで大きく注目されるのが海外ではクラウドストライク、Zスケーラー、日本ではサイバーセキュリティクラウドといった企業です。
これらの会社のセキュリティは、クラウドに最適化されているのが特徴的で、現在のようなリモートオフィス時代にうまくマッチしたシステムなのが特徴です。
遠隔医療、遠隔授業
テレワーク関連で大きく注目されたのは、他に遠隔医療や遠隔授業といったシステムです。
遠隔医療は、感染がこわくて病院へ行けない...といったニーズを取り込んで躍進。海外ではテラドックヘルス、日本ではメドレーといった企業が利用者を大幅に増加させています。
遠隔授業では、グーグルクラスルームや「Classi」というベネッセのシステムなどがよく使われました。
マイナスの影響を受ける企業は?
ホテルや宿泊、飛行機やバス予約、タクシー、飲食、観光、ジムなど、コロナの影響が直撃した業界へシステム供与や受託開発を行っている企業は、ダメージをそのまま受けることとなります。
運転手を手配するLyftのような企業は、サービス利用者が急減し売り上げが激減しています。
対策は?
全般的にIT業界はリモートワークやクラウド化の恩恵を受けるところが多いです。
一方技術の進歩は急激で、競争は激化しています。
次の需要を早めに取り込んでいくアグレッシブな姿勢が必要でしょう。
今後注目は以下のような分野です。
・非接触、自動化
多くの店舗や施設がコロナ予防、感染防止対策に追われています。
「カメラによる体温やソーシャルディスタンス測定」「調理や配膳・配達の自動化」「非接触型ディスプレイ」などへのニーズも高まっています。
・テレワーク
テレワーク化の流れは長期的には続くかもしれません。
「テレワークにおける社員の時間管理」「時間ではなく仕事の成果で評価する社員システム」「ビデオ会議を使った営業スタイルの確立」「外出自粛下での人脈の新規開拓」...など、まだまだ取りこぼされているニーズはたくさんあります。
[コロナ対策 経済編]