コロナ恐慌では、需要の多い外食店や観光は一気に利用客が減少。今後は製造業などへの影響も心配され、実際に操業停止の工場も出てきました。 このような状況は人材業界にどう影響するのでしょうか。
人材業界への影響は?
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一般に求人や派遣業界も景気動向に左右されます。
景気が悪化すれば求人数自体は減少します。
求人の成約数が低下したり、手数料・成約単価の引き下げを求められる場合もあるでしょう。
今回のコロナショックでは、各国ともGDPは大幅下落になります。
日本でも、 就職予定の会社から解雇通知を受けてしまった方、給与は払えないため失業保険の利用を進められる雇用者...などなど、労働者にとっても過酷な事態になっています。
まずは影響を数字で確認しておきましょう。
アメリカの失業率は、この夏15.8%、2021年末には8.6%と予想されています。
3月
日本では有効求人倍率は1.45倍に低下しています。
前年は1.6程度ですから今のところ10%減となっています。 とはいえ、外食・観光・百貨店・イベントなどは相当減っていると思いますし、今後は建設や製造業などの影響がどう出てくるか心配されます。
コロナ、雇用と生産に影響 有効求人倍率1.45倍に低下 :日本経済新聞
ただ3月の中途採用求人倍率は小幅増。 メディカル、金融、小売りなどの求人は好調だったそうです。
3月の中途採用求人倍率、小幅上昇の2.54倍 パーソル系調べ :日本経済新聞
4月
4月に入り日本では有効求人倍率は1.32倍に低下しています。
マツダやホンダ・日産が操業停止を実施。緊急事態宣言が全国対象となったこともあり、映画館やデパート、ゴルフ場など自主的に休業するところもかなり出てきました。
今の状態は継続は無理ですから、体力のない会社から倒産していくものと思われます。
データからは予想外の動向が見て取れます。
失業者数は増加しているのにハローワーク利用者数は減少しているようです。おそらく外出自粛の影響もあるのでしょう。
RIETI - コロナ禍での失業者・求職者データに気になる動き
失業率がさほど増えていませんが、休業していた方が失職するようになると一気に増える可能性もあるので予断を許しません。ある試算では休業者を失業者として計算すれば、4月の失業率は11.4%と推定しています。
コロナ不況、失業率微増の背後で急増する「休業者600万人」の衝撃 | 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る | ダイヤモンド・オンライン
日本の低失業率背後に大量の「隠れ失業者」、コロナで休業者数急増 - Bloomberg
5月
派遣では「6月末で契約が満了する人が多く、1カ月前の5月末に更新のタイミングが集中」するため、大量の雇い止めが起きる可能性が指摘されています。
派遣の大量雇い止め「5月危機」迫る 国は実態把握せず [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
日本生産技能労務協会の調査では「製造現場に派遣される人材の不足感を示す指数」が大幅に低下しています。今後改善になるのか注視されます。
派遣人材の過剰感高まる 製造現場、コロナ禍で―業界調査:時事ドットコム
6月
5月の有効求人倍率は1.2倍に低下していることが発表されています。5カ月連続の低下です。
そんななか面白い動きが出てきました。居酒屋で有名なワタミがi-NEXTを買収。ワタミエージェントとして人材派遣に乗り出します。スーパーや農業、介護施設にワタミの社員を派遣するとのこと。
他業種が人材派遣に進出するのは結構珍しいですし、自社社員の派遣を行うというのもあまり聞いたことがないように思います。
参考:6月から全国のスーパーや農業、介護施設にワタミの社員を派遣。休業手当は支給される:ワタミ、人材派遣事業に参入 | ビジネスジャーナル
7月
厚生労働省によれば、新型コロナウイルス感染関連の解雇・雇い止めは3万2348人になったと発表しています(見込みも含む)。
参考:コロナ解雇、3万2千人超に 3日時点、非正規が6割 | 共同通信
早期退職を実施した企業数も増加しています。
参考:2020年上半期上場企業「希望・早期退職」実施状況、最多人数はレオパレス | マイナビニュース
8月
「有効求人倍率」(季節調整値)の6月分が「1.11倍」と発表されています。新規求職件数が、18・2%増。
有効求人倍率1.11倍 5年8か月ぶりの低水準 コロナの影響で失職者増え、企業は求人絞る :東京新聞 TOKYO Web
決算が出てきましたがマチマチな感じです。
大手のパソナは人材派遣がふるわないうえ、テレワーク対応の費用もかさんだとしています。
パソナGの21年5月、営業益5%減 派遣在宅対応で費用 :日本経済新聞
一方クイックは、半導体業界向けが好調。さらに緊急事態宣言解除後は医療・福祉・建設などは回復・拡大してきたそうです。
クイック---1Q増収増益、人材サービス事業が業績に貢献 | 個別株 - 株探ニュース
倒産は?
5/19には就職支援関連の向日葵と関連会社のひまわりキャリアサービスが破綻しています。
自治体の就職支援を行う会社で、コロナの人材関連への影響としては初めてに近いケースです。
ただし4,5月の倒産企業は、はもともと業績懸念のあった企業がコロナショックでとどめを刺されるというケースが大半です。
コロナショック以降(3月~)の状況を反映しての倒産があるとすれば、むしろこれからとなるでしょう。
対策は?
Open Space in action: From Chaos to Creative: Performance Development in a VUCA World / Tatiana12
コロナショックに強い業界
コロナショックでは、飲食・観光・宿泊・旅行・交通・アパレル・化粧品・フィットネスなど数多くの業種を直撃しています。これらの業種は求人面ではしばらくは厳しい状態が続くものと思われます。
一方好調業種としては、スーパー・ドラグストア・DIY・デリバリー・巣ごもり消費・オンライン教育・IT(リモートオフィス)などが挙げられます。これらのなかには、人手が足りなくて困っている企業も多いので、できれば新規開拓しておきたいです。
クイックの決算をみると、看護師や保育士といった業種での引き合いがよかったようです。
オンラインへの移行
直接会う機会は減らさざるを得ませんので、オンラインビデオシステムの利用が大事になるでしょう。
求人・就活のオンラインセミナーでは「質問ができる」「時間を気にせず見れる」「場所の制約がない」など評価する声が多いようです。
ウェブ就活イベント活況。「リアル」はもういらないのか(ニュースイッチ) - Yahoo!ニュース
オンラインのビデオ会議システムとしてよくつかわれているのは
・ZOOM
・SKYPE
・Whereby
...などです。
今後オンラインやビデオ会議への対応を予定されているのであれば、これらのシステムに使い慣れておく必要はあるでしょう。
新しい働き方 の提案
「開店休業に近い居酒屋さんや飲食店では、転職という形態ではないまま他社のデリバリーの会社のスタッフとして勤務する」といった方法も出てきます。
これなら会社の正常化に伴って戻るのも簡単ですし、人手不足で困っているデリバリー会社も助かります。このようなスタイルが拡大してくるかもしれません。
福利厚生の強化
企業側の対応も必要ですが、ますます日払いニーズは高まるものと思われます。
学生さんならバイトが激減しており今すぐにでもキャッシュが欲しい状況は高まります。
また、企業倒産のリスクは今後ますます高まるでしょうから先に支払いだけは終わらせておきたいと希望するユーザが増加することは容易に想像できます。
このように就職やアルバイトでの条件によっても応募が左右されるのではないかと思います。
コロナ対策の徹底
一部派遣業では、「社員はリモートなのに派遣社員は出社をもとめられる」「換気などの対策をしてくれない」などの声も出ています。
しかしコールセンターでクラスター感染が起きた事例もあり、3密対策を徹底しないと派遣業自体も取引停止になるリスクがあります。
このあたりは派遣先の会社さんと十分話し合いをして、対策やルールの徹底について事前合意しておくべきだと考えます。
派遣切りにあったら?
一方雇われる側で特に問題になるのが、コロナを名目とした派遣切りです。
緊急事態の解除で経済再開への期待が出ており、そういう意味ではいっときよりは明るい兆しも出ています。中国では自粛反動の爆買いが起きています。国内でもそのような場合に備えて人手を用意しておきたいと考える経営者の方もいなくはないでしょう。
他方、すべてが元に戻るとは思えません。派遣切りにあった場合は相談・交渉・職探しを進める一方で、生活費・キャッシュの確保をしていく必要があるでしょう。
キャッシュですが、スーパー・デリバリー関連はまだまだ募集は旺盛です。そのあたりはねらい目かなと思います。
[コロナ対策 経済編]